月下の君には秘密です。


「…俺が一番心配なのは、晃だなぁ。はぐれるなよ?」

「え、俺ぇッ!?」


「昔から、すぐ一人ではしゃいで迷子になるから…」

月ちゃんの言葉に井上も『そうそう』と無邪気に笑っていた。


「…んなッ!?そんなガキじゃねぇよ!どっちかって言ったら、井上の方が迷子に…」


「「…ならない。」」

二人に声を合わせて反論されて、俺の口が尖る。


「…晃ちゃ~ん、お手て繋いでおきますか~?」

井上が子供を相手にするように、高い声を出して俺をからかう。


「ははは…!本当に、それがいいんじゃないか…?」

月ちゃんも片眉を上げて、俺を覗き込んだ。


俺は、
二人の真ん中で…

ふて腐れながら。


でも少し嬉しくなって、
心が温かくなって…


少しだけ…
『勇気ある行動』
に出てみようかな…?
…と、思った。



「……ん。」

俺はポケットに突っ込んでいた手を…
二人に向けて、出した。


「…え?」
「何…?」

「……手、繋いでおこうと思いますッ。」


やっぱり照れ臭くて、
ちょっとだけ後悔…。

俺は手を二人に向けたまま、
プイッとそっぽを向いた。


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