月下の君には秘密です。
大好きな二人に手を繋がれて。
俺の顔は緩んでいた。
でも、いいんだ。
こんな人混みの中、誰が誰かなんて分かりゃしない。
学校の奴らに見られたってバレたりしないだろう?
俺たちは手を繋いだまま人混みをぬって歩いて、少し人の少ない空間を見つけると歩く速度をゆるめた。
「…3人で手を繋ぐなんて、何年振りだろうなぁ?」
月ちゃんは俺の右手側。
「本当だね~。ちょっと、やっぱり照れ臭いよね~!」
井上は俺の左手側。
左手の方が、俺の握る手がちょっと躊躇いがち。
…今度は、
俺を挟まないで。
二人だけで繋げばいいよ…。
これから、いっぱいさぁ。
笑いながら、そんな事を考えている俺は少しスッキリした顔をしているんだと思う。
「…あ!晃ちゃん、あたしのあげた手袋してない!」
井上が俺と繋いだ手を見てそう不服そうに言う。
「…あ~…忘れた…」
「――もぅ!あげた意味ないでしょ!?ポケットに手を入れるクセ、直ってないし!」
「わははッ…」
俺はそう笑って謝って誤魔化したけども。
本当は、
コートのポケットに入ってる。
だって…
せっかく手を繋ぐのに、
もったいないだろッ!?