月下の君には秘密です。
結局…
折角の一斉下校も意味なし。
部活を終えて帰る時間と差ほど変わりない。
季節は秋。
びゅうと抜けていく肌寒い風が、もう秋の終わりを告げていた。
すっかり暗くなってしまった夜道を、井上と並んで歩く。
普段通りの家までの道のり。
でも、
会話の内容はいつもと違った。
「…んまぁ、あたしは小林くんほどは驚かないけどね~。」
「――…嘘じゃん。あり得ないって顔して驚いてたじゃんかッ!」
俺はふて腐れたままだった。
そんな俺をなだめる様に笑いながら、井上は俺を見上げる。
「あはは…。いや、でも晃ちゃん中学でも密かに人気だったんだよ?女子の中で。」
「……うっそ。」
「…本当。ほら、全然気付いてないんだから~。今回だって、実は自分が一番びっくりしてるんでしょ?」
「……はぃ。」
まさか、とは思いましたが。
その「まさか」でした。
「…だってさぁ…」
俺が口を開くと、横から井上が割って入る。
「――『そうゆうの全然興味ないし』でしょ?女の子たち、皆それで諦めてたんだよ~?」
「……あ~…」
俺の台詞を取られてしまって、なんと答えて良いものか、俺は口を濁した。