月下の君には秘密です。


アイツらが離れていく背中を見つめながら…、

俺は小林の言っていた事を思い出した。

『幼馴染み離れ』…


今なら…
いや、
今しか出来ないかもしれない。

離れるって言っても、
少しだけ…。


俺は二人の手をそっと離して、
白い息を吐いて言った。


「…俺、花火は…アイツらと見るわッ…」

「「…え?」」


多分、今日だけ。
クリスマスだし…、
二人きりにしてあげる。

俺が井上が好きだって事は変わらないし、俺と二人の関係はきっと何も変わらない。

でも…
大好きな二人が幸せになるなら、二人の距離を縮めてあげる。


二人の関係を、
俺が…変えてあげる。


優しい俺様からの、
二人への…
『クリスマスプレゼント』。


井上に貰った、
『手袋』のお返し。


井上の手と、
月ちゃんの手を取って。

二人の手を繋げてあげた。



「……ってわけでッ!二人で仲良く花火ねッ!?」

二人はお互いの繋がれた手を見つめて、照れ臭そうに…でも、嬉しそうに困っていたから…

俺は意地悪く、
『ふふん』と笑った。


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