月下の君には秘密です。


「…それに、静かな方がいいかな~と思って…?」

「……は?」

急に落ち着いた声を出す紗季に驚いて、俺の視線は紗季へ向いた。


「…アッキー、泣きそうな顔してたから…。」

紗季はそう言って、さっきまでの元気をなくして困った様に微笑んでいた。


「……してないッ。」

「…してた。こないだの『タコさんウィンナー』の時と同じ顔してたよ…?」


「――あれはッ!お前が俺のタコさん盗ったからでしょッ!?」

「……その前。言ったでしょ?『辛気臭い顔してる方が悪い』ってサ…」

そう言う紗季は、
いつものテンションより低めで。

白いダウンジャケットのポケットに俺と同じ様に両手を突っ込んで、
『人も居ないから風が抜けて寒いね』と笑った。


バレてるのかな…
そう恐る恐る紗季の顔を覗き見ていると、


「…さっき、邪魔しちゃって…ゴメンね?」

そう白い息を吐いて、
花火を見上げた。


「…ぁ、…あぁ…」

3人で手を繋いでいた時だ。
小林に発見されて、近付こうとする小林を紗季が止めてた。

『ごめんね、アッキー』
そう言っていた。

あれは…、
別に紗季が悪いわけじゃないのに…

また謝られてしまった。


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