月下の君には秘密です。
なんか…
紗季には、もう隠さなくてもいいのかもしれない。
紗季は…、
分かってるのかもしれない。
気付いちゃってたのかもしれない。
それで、俺を連れ出したのかもしれない。
「……俺の事、黙ってて?」
多分、紗季は言わない。
でも一応聞いておいただけ。
「…あははッ、言わないよ。アタシ、アッキーの味方だもん!」
最初の印象は、
気の強そうなギャル。
今日だって、白いダウンジャケットに短いジーパンを履いて…
足元はヒールの高いロングブーツだし。
でも、意外。
見た目で人を判断しちゃいけないなッ。
「…お前、もしかして…良い奴かも。」
紗季の笑顔につられて、俺もちょっとだけ笑った。
「何~!?今さら気付いてるワケ!?遅いしっ!」
紗季はいつも通りに明るく笑っていて、俺はなんだか助けられた様な気がする。
寂れた公衆便所の脇に、一つの外灯と誰も使わない電話ボックス。
その横に、
自動販売機を見つけて。
俺はポケットを探りながら、紗季を置いて歩き出した。
「…どこ行くのー?アッキー!花火見ないの~!?」
紗季が俺を追いかけて、後ろから小走りして来る靴音が聞こえた。