月下の君には秘密です。


「…ったく、遅くなるなら連絡くらいしろよ、晃…。」

月ちゃんも、
呆れながらちょっと怒ってる。


「……ごめッ…」

「もぅ!心配したんだから!」

そう頬を膨らませた井上の表情が、俺を見て変わる。


「――晃ちゃん…泣いた!?」

井上が外灯に照らされた俺の顔を、下から覗き込んでそう聞いた。

「……へッ!?」

俺は焦った。
泣いてからもう結構時間が経ってるし、なんでッ!?


「…本当だ。目が腫れてるな?少し、鼻声だし…」

月ちゃんも、心配そうに俺を覗き込む。


「…いやッ?ほら、鼻声は風邪ッ!?寒かったし!」

俺はそう言って、顔の下で手をヒラヒラさせて否定したんだけど。


「……誰に泣かされたの?」

俺の弁解も虚しく、
俺が泣いた事は決定らしい。

……困った…。


「…ぁ、紗季ちゃんに『シメられた』とか…」

「あぁ…さっき、遥が言ってた例の子か…?」

月ちゃんがそう聞いて、井上が首を縦に振った。

……っていうか。

さっきって…。
せっかく二人きりにしてあげたのに、何で俺の話してんのよッ!?


「…いやッ。紗季には、むしろ助けられたっていうか…、ねッ?」

「じゃあ、誰!?」


< 135 / 160 >

この作品をシェア

pagetop