月下の君には秘密です。


井上はムッと顔を歪めて、そう俺に聞いた。
なんか…、井上まで泣きそうな顔をしてる。


ど、どぉしようッ…。

二人は俺が答えるまで、引かないんだと思う。
じっ…と、俺を見ていた。


「…晃ちゃんを泣かしたのは、いったい…誰ッ!?」


怒ってる…。

『お前だよ』なんて、
本当の事は言えないじゃんッ?



「…えっ…と、…小林とちょっと…喧嘩?」

苦し紛れに、
小林を悪者にしてみた。


「…小林か…」

月ちゃんはそう静かに呟いて、
両手をパキパキと鳴らした。
…目が、怖い。


「……小林くん。明日ちゃんと学校で怒っとくから!」

井上もそう眉間にシワを寄せて、頬を膨らませた。


「…あははははッ…」


そんな二人の様子が嬉しくて、

近所迷惑も考えずに、
大声で笑ってしまった。


明日…、
小林には謝っておこうかなッ。



「…ぁ。あたし、おばちゃんに晃ちゃんが帰って来た事言ってこなきゃ。」

井上はそう言って、
家の方へと急ぎ足し始めた。


「…おばさんも心配してたんだぞ…?」

「うっそぉッ。するはずないじゃん!?」

「…少し、してた…。」

俺たちも少し遅れて、
家に向かって歩き出した。


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