月下の君には秘密です。


――12月25日。


今日は、
待ちに待った『終業式』。


部活が今日は無いので、いつもと変わらず自分の席でカバンを肩に掛けて…、
遥の帰るタイミングを待っていた。

『忠犬アッキー』ってやつ…。


遥は珍しく、勢い良く自分の席から立ち上がると…。

視線は俺の前の席の、小林。
顔はどう見ても不機嫌。


「――…小林くん!」

そう強めに呼ばれて、きょとんとする小林。

……ヤバイッ。
昨日の、『怒っとくから』だ。


「…昨日、なんでっ…」

「――…遥ッ!ハールーカーッ、帰ろッ!?」

俺に久々に下の名前で呼ばれた事に驚いて、遥は小林に向けていた視線を俺に移した。


「…へ?」

「もう、いいから。帰ろうぜッ!?」

俺は予想通りの反応に『ふふん』と笑った。


「……へっ?…うん。」

遥は怒っていた事も忘れて、戸惑いながら俺の横へと近付く。

取り残された小林は、やっぱり『きょとん』と見つめていた。


「…いっ…たい、何…?」

「何でもない。」

俺はそう返したんだけど。


「…何でもない事ないでしょ、今のは…」

「…うるさい。」


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