月下の君には秘密です。


「…はぁ?『うるさい』って……って、紗季ちゃ~ん!?」

小林は教室のドアを見つめて手を振り出す。
俺がそっちを見ると、ニカッと笑う紗季の姿。


「アッキー!昨日ぶりー!」

「…おぅ。」

そう俺に近付く紗季に小林の注意が向いて、また紗季に助けられちゃった。


「ねぇねぇ!大晦日、アッキー『年越し』一緒にしよ~!?」

そう紗季は俺の腕にまとわりつく。


「…大晦日の初詣は~、やっぱり家族とコイツらと過ごすから…」

「――ちッ、やっぱりか!」


「紗季だって家族と過ごすんじゃないの?」

「ん~ウチは親忙しいから。毎年一人で寂しいんだ~…なんて。」

紗季がそう言うと、小林が顔を輝かせて無言で自分の顔を指してアピール。

なんか、それはイヤ。



「…紗季も、一緒に行く?」

気が付くと、
俺はそう言っていた。

紗季はパァッと顔を輝かせながら、でも戸惑って遥と俺を交互に見ていた。


「…マジで!?アッキー、いいの…?紗季も?」

「いいよなッ?遥ぁ。」


俺は今まで、
『3人』
にこだわり過ぎていたのかもしれない。

他の誰が入ったって、
俺たちは、変わらない…。


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