月下の君には秘密です。
気が付けば、
目の前には『厚い壁』――…。
ここは暗くって。
なんにも見えなくって。
でも、あったかい。
きもちいい。
俺は優しさに包まれていた。
だから、
この場所は好き。
耳を澄ませば優しい声がして。
その声に、
近付きたくて。
ここから出たくて、
厚い壁を蹴っ飛ばしていた。
いつの日か、
その壁にヒビが入って。
俺の体は、
外気に触れた。
「――…あぁ~っ!!」
優しい声の主が、
俺の目の前で嬉しそうに叫んでいた。
「――パパぁ~、ママぁ~!うまれたぁーっ!!卵がかえったよ~!」
……たまご?
「――はじめまして!あたしの名前はハルカ!」
…ハルカ…?
「…で。君の名前は『コン』!今日からずっとお友達だよ!?」
目の前の女の子は、
そう言って嬉しそうに笑ってた。
ずっと、いっしょ…?
――…ワンッ!
そう俺は一発吠えて、
嬉しくって、
尻尾をフリフリした。