月下の君には秘密です。
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俺に毎日向けられる、
当たり前の笑顔。
それが、
どんなに大切で…
どんなに特別なモノなのか、
この日
改めて身に染みました。
だから。
聞かなければ良かったです。
あんな質問、
しなければ良かったです。
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「…俺は、そうゆうのってよく分かんないけど。井上は…?」
俺は少しふて腐れたまま、
無邪気に笑う井上にそう聞いた。
そういえば、
聞いた事ない。
「え!?あたしッ!?」
…まぁ、いないんだろうな。
だって、もしいたら俺とこんなに一緒にいないだろ?
なんて思ってたのに。
「…ぁ…あたしも、そうゆうのよく分かんないから。ねぇ?」
そんなに乱れてもいない髪に手を掛けながら、俺の目を見ずにそう答えた。
「……ふぅん。」
俺もそう夜空を見上げた。
時たま寒い風が吹く、
月が綺麗な静かな夜。
彼女の息もほのかに白い。
その光景が、
頼りなくて儚げで…
何だか、
胸が苦しくなったのに、
俺は気付かない振りをした。