月下の君には秘密です。


今日は、休日。
でも、陸上部の練習が午前中だけある。

俺は半分寝ぼけながら。
洗面所の鏡の前でシャカシャカと、歯ブラシを動かしていた。
それはそれは遅い速度で。

眠い…
眠たい…

寝ていたい。


井上に「好きな奴がいる」と分かってしまってから、どうも眠りが浅い気がする。

不安で不安で、しょうがない。
だって、俺じゃないって事は確かだったから。


「……あぁー…」

マブタ開かない。
歯ブラシを動かす腕すら、上げるのが面倒になってきた…。

眠たいけど、
練習に早く行かなくては…。


俺は陸上部で短距離が専門。

走るのは気持ちが良いし、
走ってる間は身体中に風をいっぱいに受けて、

全てを忘れられる。


走っている間だけ、ね。


井上の事だけに限らず他の事でもそうだが、

グジグジ考えるのは嫌いだ。
…嫌いなのに、
考えちゃう自分も嫌いだ…。

だから、
走るのは好き。


『それだけの理由?』
そう人によく言われるけど、
……何が悪い。

ほっとけよ。
いいじゃんかッ。


そうだ。
走って走って、
リフレッシュするのだぁ~!

そう気合いを入れて、
言うことを聞かないマブタをカッ…と開く。

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