月下の君には秘密です。


後輩の一人が、
ポンッとジャンプアップする傘を開いて…


「じゃあ、お先ですッ!」

そう…普通に帰ってく。


「…!?」

俺が驚きながら奴らを見回すと、もう一人は、ビニ傘。
なんと小林まで持っていやがるから不思議だ。


「…皆さん、置き傘かね…?」

思わずそう聞いた俺に対し、小林は意地悪く笑う。


「おや、アッキー。傘、ないのかね?天気予報を見てれば有名なお話よ?」

「……見てねぇし。」

ブスッと答えた俺に、


「昨日のアレで浮かれちゃってるから~、自業自得ってやつ~?」

小林はそう言うと、
自分のビニ傘を開いて薄情にもこの場を去ろうとした。

――…甘い。
俺がそのまま帰らせるわけがない。


「…浮かれてねぇしッ!お前の物は、俺の物じゃん。お前は後輩に入れて貰えッ?なッ!」

ガシッと小林の肩に回して引き留める。


「はぁ!?…なんで、こんな横暴な奴が俺よりモテるんだ!?」

…お前、
そればっかだな?

小林の後輩も声をあげて笑っている。


「…アッキーの方が家近いだろ!?走ったら10分かかんねぇしッ!水も滴る良い男になれっ!俺の物はあくまで俺のだ!」

そんなやり取りをしている時だった。


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