月下の君には秘密です。

｢井上さーん、教えてよぉ。｣

そんな小林に、
井上は黙ってニコニコ笑っていた。

…なんか、
怒ってるよ？これ…


｢…ぃ、井上？帰ろうぜ…？｣

｢晃ちゃん、その前に。あたしに何か言う事あるよね～？｣

俺は一歩身を引いた。
あれ、だ…


小林が何かを感じ取って、俺の耳元でボソボソと話し出す。


｢…アッキー、井上の笑顔がいつもより黒い気がするのは俺の気のせいか…？｣

｢…ぃや。お前、マジで早く帰った方がいいぞ…？知らないよ…？｣

俺が小声でそう言うと、
小林は即ささと後輩を連れて逃げ帰った。


｢じ、じゃあな！また月曜な！｣

｢おぅ…｣

さて。
邪魔者は帰った。

怒られているのは俺なのに、
小林を脅して帰したのは理由がある。



｢…晃ちゃん？ほら、降ったよ…？傘、欲しいよねぇ？｣

｢…はぃ。｣

井上は、
ふふん…と得意気に笑った。


｢絶対降らないんじゃなかったっけ？ねぇ？…ごめんなさい、は…？｣


｢…降りました。ゴメンナサイ。傘、下サイ…。｣

俺は、
素直に謝る。

井上は、笑顔で怒る。
そして、
怒らすと怖い…。

こんな弱い俺、
小林なんかに間違っても見せられないだろ…？