月下の君には秘密です。


もうすぐ…
この角を曲がれば俺たちの家の前の道で。

この緊張状態から早く解放されたいのと、
でも…
なんか勿体ない様で、
俺は複雑な気分だった。


気が付けば、
会話もなくなっていて。

これが普段通りだったか、
何か話した方がいいのか…

『いつも』が、
分からなくなってしまって、
俺はオロオロと目を泳がせていた。



「…ぁ、ねぇ。あのさ、晃ちゃん。最近さぁ…」

何か言葉を探しながら、
言葉を選びながら、
言い出しにくそうに井上が下を向く。


「……んぁ!?」

ドキリとした。
思わず井上を見たまま思考回路が停止。

バ、バレた…?

『最近、晃ちゃん挙動不審?』
『最近、晃ちゃん変だよ?』

もう…
誰か助けてくれ。



「…最近さぁ、…月ちゃんに会った?」


「……へッ?」

思いもよらぬ質問に、
ビックリする程に変な声が出た。


「…何、変な声出して…。月ちゃん!近くに住んでるのに、最近会ってない…。」

「…あぁ、月ちゃんね。」

ビックリした…
バレたかと思った。

ホッとした俺は気持ちを持ち直して、急に元気になる。

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