月下の君には秘密です。
「そういえば、しばらく会ってないなぁッ?」
「…ね。近所なのに会わないもんだね~?」
『月ちゃん』は、
俺たちのもう一人の幼馴染み。
中学までは三人組だったんだ。
おバカな俺たちと違って頭の良い月ちゃんは、高校から私立に通っている。
「あいつは電車通学だし、家出る時間も違うしなぁ?それが?」
素っ気なくそう答える俺に、不服そうに唇を尖らせた。
「…なんか、寂しいよね…」
「ん~…、まぁ。勉強ばっかしてんじゃねぇのッ!?」
ははっ…と、沈む井上を和ませようと誘った台詞。
笑顔が戻ると思ったのに、
反応がなくて、
「……井上?」
思わず心配になる。
そんな俺の声色に気が付いたのか、
「…ぁ、あ~、ほら。そうだ!晃ちゃんがモテモテな事、知らせなきゃいけないし!」
井上は急に顔をあげて、俺に向けて歯を見せて笑った。
「……また、その話なのかよ…」
代わりに、
俺の唇が尖ったのは言うまでもない。
…この井上は、空元気。