月下の君には秘密です。


「まぁだ寝てるの?ほら~起きて起きて!」

「……は…?」

なぜに井上が俺の部屋に…?


「は?じゃなくて!早く起きて!もうお昼御飯だよ!?」

「……えぇ、知ってますが…」


デリカシーない人、
もう一人いました…、ここに。

井上はズカズカと何の躊躇いもなく俺の部屋に足を踏み入れて、俺はまるで女の様に布団の中に半分顔を隠した。

カーテンがシャッと気持ち良く音をたてて開くと、眩しくて顔をしかめる。


「…もぉ!起きてって。」

井上はそう言って、
恐ろしい事に俺の布団を剥がそうと手を伸ばした。


「――…!?おぃッ!」

俺が負けじと布団を引っ張り返したから、井上の体が揺れる。

今は、今は…
布団を剥がされるわけにはいかない。


「晃ちゃん!!この手を離しなさい!」

「――…ムリッ!!」

今はどうしても、
なんとしても、ムリッ!


「もぉっ!みんな待ってるから早く起きて!」

…しつこいなッ。
この鈍感娘は、男の子の朝の事情を分かってはくれない…。


「――分かったから。起きるから!だから先に行ってて!?」

「…嘘。また寝るもん、晃ちゃんは!諦めて布団離しなさい!」


誰か助けて…


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