月下の君には秘密です。


これは、
その、つい先日の出来事。



キーンコーンカーンコーン…

いつも通りの学業終了の合図。
HRを終えると、一斉に教室内はざわめき出した。


「あ~…今日も長かった…」

俺は机の上で大きく欠伸をしながら伸びをしていた。


幼馴染みで、
家も隣の「井上さん」。

腐れ縁の俺らは、2年1組。
クラスも一緒だった。

当然のごとくお互いの部活がない日には登下校をともにしていた。


俺の席は廊下側。
彼女の席は、
窓側から2列目の後ろから2番目。


彼女に目を向けると、
まだ前の席の女子とお喋り中。


俺は席から立ち上がると、机の横に掛けられた斜め掛けのカバンを肩に背負いながら、井上が俺に視線を向けるのを待つ。

…いつもの事だ。


あいつはお喋りし出すと相手に合わせてしまうから、相手次第では長くなる。

それを知っている俺は、
チラチラ視線を送りながら黙って待っているし…

そうやって待っている俺を知っている井上は、


『晃ちゃん、お待たせっ!』

そう言いながら、アセアセ俺に駆け寄ってくるんだ。


そんな…
いつもと同じパターンだと思っていたのに、

この日は、違った。


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