月下の君には秘密です。


家から一番近いコンビニまでは、歩いて10分の距離。

俺の手には、たかが牛乳一本が入ったビニール袋。
それをぶら下げて、月ちゃんと並んで歩いていた。


「…晃~?まだ拗ねてるのか…?いいだろう、お使いくらい…」

月ちゃんは、
…何も知らない。


「…拗ねてねぇし。俺はそんなちっちゃい男じゃないしッ。」


俺たちが会う時は、
必ずと言って良い程、井上も一緒で…
今は月ちゃんと二人きり。
こんなチャンスは、
滅多にないかもしれない。

聞くなら…、
今しかないかもしれない。

俺の単純な脳ミソは、
そんな事を考えていたせいか、喋る事を忘れていた。


「…ぁ…あのさぁ。」

「ん?」

俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

言えッ。
聞いちゃえッ、俺。


「…月ちゃんは…井上が、好き…?」

――…聞いちゃった…俺。
頑張った、俺ッ!


「好きだよ?」

え……

俺は即答する月ちゃんの顔を、思わずバッと見て…固まった。

俺のか弱い心臓の、
ドクン、ドクンと大きな音を感じた。


「…何、それで拗ねてたのか?同じ位、晃の事も好きだよ?別にヒイキしてるわけじゃなく、単純にあいつは風邪ひきやすいから…」

……はぃ?

< 60 / 160 >

この作品をシェア

pagetop