月下の君には秘密です。


風が冷たい。
きっと俺が涙目なのは、
北風が目に染みたからなんだ…。


月ちゃんは俺の首に腕を回したまま、軽く抵抗する俺を楽しんでいたんだけど。


「…晃、お前『あの事』もちゃんと黙っているだろうな…?まさか言ってないだろうな?」

月ちゃんは急に真剣になって、深刻そうに俺に聞く。


「……あの事?」

俺の心の中は、
自分の事で精一杯で。

月ちゃんが何の事を指しているのか、分からずにいた。


「…とぼけてるのか?俺がお前達と別の学校を選んだ理由だよ…」

「…ぁ。あぁッ。」


月ちゃんが公立じゃなくて私立を受験した理由。

二年前の今頃、
『どぉしてだよッ!?』
そう食って掛かる俺に…

俺だけに、
秘密で教えてくれた事。


「…言ってない。これからも、多分言わない…。」

月ちゃんはホッと一つ溜め息をついて、俺の頭を撫でくり回した。


「よしよし、良い子だ。」

「……だからッ!月ちゃんまで犬扱いすんなってッ!!」

「はははは…」


片眉を上げて、
穏やかに笑う月ちゃんが好き。

俺たちの、
こんな関係が好き。


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