月下の君には秘密です。



『…俺は公立へは行かない。私立の高校へ行く…』


俺も井上も、
その告白にすごく驚いた。

当然、これからも俺たちはずっと一緒だと思ってたのに。

裏切られた気がした。


『…そう…。でも、近所だし、すぐ会えるもんね?』

井上は寂しいくせに、元気な振りをして笑っていた。



俺は納得がいかなかった。
その日中に、月ちゃんの家に一人乗り込んで問いただした。


『…どぉしてだよッ!?』

俺に胸元を掴まれて。
月ちゃんは目を細めて…、

悲しそうに、笑った。


『…俺といると、あいつが傷付くから…。俺に恨み言を何も言わずに、一人で…隠れて泣いているから…』


俺の手から力が抜ける。

…悔しかった。

俺たちの誰が悪いわけでもないのに、どうしてこうなるんだろう…。

やっぱり、
この時も俺は泣きそうだった。



この時の俺には、
恋愛感情とかは全く分からなくて…。


今なら、
分かる気がする。

月ちゃんは…、
井上の事を一番に考えてた。
…守ろうとしてたんだって。

この時には、
もう『好き』だったんだって。


やっぱり、
月ちゃんには敵わない。

二年も経った今。
やっとそれに気が付いた。


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