月下の君には秘密です。
母さんは能天気にケラケラと笑いながら、俺たちを労ってか、一応窓まで迎えに来る。
「…あら、月ちゃんは?」
「え?」
母さんがそう聞くから、俺は後ろを振り返った。
「あれぇ…?」
さっきまで居たのに、
いない…
どこ行ったのよ。
どこか行っちゃいたいのは、俺の方でしょッ…!?
「…ぁ、あそこ。」
井上が庭の中心を指差した。
月ちゃんは、庭の中心で何をするわけでもなく、俺たちに背を向けて立っていた。
庭の紅葉を眺めていたのかな…
「…月ちゃ~ん?」
井上がそう片手を添えて呼び掛けると…、
月ちゃんはすぐに振り返って、笑顔を浮かべて歩いて来る。
黄色や赤色の木々を背景に。
風が吹くと、
銀杏の黄色い葉が辺りに降り注いで…
月ちゃんの髪もなびいて光る。
穏やかな笑顔も、
キラキラして見えるから不思議。
「…綺麗ね~?やっぱ月ちゃんは絵になるわね、うちの息子と違って…。」
そんな母さんの言葉に、
言い返すどころか…
納得してしまう位に、
それは…
綺麗な光景だったんだ。