月下の君には秘密です。


「…はははッ…」

俺はテストの問題用紙を受け取りながら、乾いた笑いを発して誤魔化していた。

この俺が勉強なんて、
してくるわけないじゃんねッ?


先生は隣の席の井上に一瞬だけ目をやって、


「…お前~、隣の席が学年3位の井上だからって、カンニングとかするなよ~!?」

とジロリと俺を睨む。


「…はぁッ!?」

そんな事するわけないじゃん。
俺はそこまで落ちぶれちゃいねぇしッ!

俺がムッと睨み返していると、
先生は、井上と俺を交互に見て驚いていた。


「…冗談だって…。どうして同じタイミングで井上が怒る…?」

へ…?

俺が口を尖らせたまま、パッと横の井上を見ると…

俺と同じ表情をして、
先生を睨み上げていた。


「………。」

珍しい…
井上が笑顔無しで怒りを表現するのは、俺と月ちゃんの前だけなんだけど…


「…晃ちゃんは、確かにバカだけど。悪い事は絶対にしませんッ!ヒドイ、先生。」

そう言って。
横で目を丸くする俺には見向きもせず、ムッと眉間にシワを寄せていた。


「――…ふ…ふははッ!」

俺はその言葉が嬉しくて、
思わず顔をゆるめてしまっていた。


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