月下の君には秘密です。


その日のテストの間中、
俺の顔は気を許せばニヤけていて…。

静かな教室内。
皆のカリカリという筆記用具の音だけが響く中、
自分の思い出し笑いの声が漏れてしまわない様にするのに必死だった。

全く集中出来ず…、
やっぱりテストの結果はいつも通りだと思う。



「…あぁ~終わった終わった!」

「終わった…って。晃ちゃん、あと二日あるんだよ…?テスト。」

いつもの帰り道を進もうと校門をくぐった俺たち。
井上は、いつもの呆れ顔。


「…萎える事言うなよ…」

「帰ってちゃんと勉強しなさいね?晃ちゃん?」

「……イヤ。」

俺は制服の上から着た黒いダッフルコートのポケットに両手を突っ込んで、プィッとそっぽを向いた。

「…もぉ。」

そう怒る井上の声が可愛い。
俺の顔がゆるんだから、そっぽを向いたままだった。


「…ぁ。いたいた~、アッキー!!待って待ってー!」

後ろから…、
俺を呼ぶそんな声が聞こえて。
俺の顔は仏頂面に戻る。

…小林だ。

俺が「あぁん?」と振り返ると、
校門から手を振る小林が、珍しく女連れ…。

小林が俺に駆け寄ると、
その女もゆっくりと遅れて歩いて来る。

誰…?

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