月下の君には秘密です。
「良かった~、間に合った。」
「…何、小林。お別れのハグなら今日はしてやらねぇぞ。明日もテストなのに、バカが移るからヤダ。」
表情一つ変えずにブスッとそう俺が言うと、横で井上は両手で口を押さえながら笑いを堪えていた。
『笑ったら小林くんに失礼』
ってところかな。
笑っちゃえばいいのにッ。
「…ヒドイよ、アッキー。」
…で。
そう顔をしかめる小林の一歩後ろで、
「…ふぅん。」
そう俺を品定めする失礼な女は、いったい誰なわけ?
俺の視線に気付いた小林が半歩退いて、手のひらをその女に向けた。
「…ぁ。この子、サキちゃんだって。『アッキーってどれ?』って聞かれた。」
「…はぁ!?」
「でッ、連れて来てみた。ぁ、サキちゃん。これがアッキー!宜しくね?」
そう小林は今度は俺を指差し出して、俺はポカン…と口を開けるしかなかった。
どれって…、これって…。
何なわけッ!?
サキという女は、
井上とは正反対のタイプというか…。
制服のスカートはパンツが見えそうな程に短く、化粧はバッチリで耳にはピアス。
髪の毛は辛うじて黒いものの、
俺の苦手とするギャル系…?
気ぃ強そう…
俺、シメられるのか…?