月下の君には秘密です。
「むぅ。あったら、どぉしてくれんのよッ!?」
「…ん~?んー…。」
井上は少し考えてから、
いつも通り、
無邪気に笑った。
「…そしたら。あたしが晃ちゃんを守ってあげます。」
「…はっ…はははッ!!」
男のセリフを、
井上に言われた。
教室で俺が思っていた事を、
そのまま、
そっくり返された。
「―…何っ!?笑うところ!?」
井上はそう怒っていたけれど、俺の笑いは止まらなかった。
『有り難う』の代わりに、
俺の口から出た言葉は…
「…頼りねぇ~ッ!」
だった。
俺はやっぱりバカだと思う。
「…むぅ!晃ちゃんなんて知らないからッ!」
「はははッ…!だって。弱ッ!すぐ負けそう!」
「…シメられちゃえ!」
井上はそう口を尖らせて、
ズンズンと俺の前へ前へと歩く。
「…ははッ!あははは…待てって。待ってよ、井上~ッ…」
いつもの帰り道。
今日は…
追い掛けるのが俺の方。
…つっても、
すぐに追い付いちゃうんだけどね?