月下の君には秘密です。


『――ヤダ。』

『ふ~ん?じゃあ…、明日の朝のコーヒーはブラックになるわよ~?いいのね!?』

母さんはそう意地悪く笑った。

俺があんな舌が痺れる苦いものを飲めるわけがない。
毎朝、俺は母さんが入れる牛乳たっぷりのカフェオレ。

それを知っているから言える脅し文句…。

タチが悪い…


俺が『う~…』と顔をしかめていると、ソファーの横で父さんが口を出す。


『…晃く~ん。父さんも朝はカフェオレがいいな~?』

『…ほら~。ね?晃ちゃん!』


『………。』

この親たちはッ!
自分の子供に甘えた声でねだりやがって!

俺は完全に負けて、
ムスッとソファーから立ち上がる。

母さんは『悪いわね~?』と小銭を俺に握らせた。
自分がそう仕向けたくせにッ!


…で。
俺は寒空の下。

また歩いて10分のコンビニへ行き…

現在に至る…。


それでも風邪を引く気配が全くないのは、…やっぱり俺がバカだからなのか…?

ここいらで一発、
クシャミでも出やしないか…
こわばった肩の力を抜いて、寒さに身を任せてみる。

……。
………出ねぇ…。

俺だって風邪でも引いて手厚く看病されたいのに。
神様は俺が嫌いなのか?


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