月下の君には秘密です。


月ちゃんが、
女連れで歩いてる…。


…なんで…?
月ちゃんのお母さん?
いやいや。
それにしちゃあ…、
背は小さくて、雰囲気的に同年代…。

こんな時間に…?
よりによって、
この家の前の通りでッ!?


俺は反射的に井上の家を見上げた。
『あいつに見られでもしたらッ。』と、井上の悲しそうな顔が目に浮かんで、きゅっとなる。


…し、真相を、
見極めなくてはならない…

その女の顔を確かめようと、
俺は息を殺していた。


『あははは…』

そんな高い笑い声を、
悪戯な風が運んできて…

俺の耳が、
その声を知っていた。

…胸が、痛んだ。


外灯に照らされた女の後ろ姿。
俺の知っている、
『灰色のピーコート』…。


なんでだろう…。
なんで、
俺は見ちゃったんだろう…。

決定的だった。


どうして、
二人だけで会ってるの…?

俺の事呼んでくれた?
俺が居なかったから、
だから、
二人なのか…?


月ちゃんの横で嬉しそうに笑っているのは。

「……井上…」


やっぱり、
神様は俺の事が嫌いなんだ。


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