月下の君には秘密です。


夜空のお月様と外灯が、
二人の影を作る。

俺の吐く白い息で、
その光景が霞んでいる。


…俺、
何見てるんだろ…。
帰ろうかな…

腕に掛かる牛乳を見つめて、体の向きを変えようとした。
体も心も、冷えきっていた。


『…ワンッ』

犬の…鳴き声…?

その声に反応して、
俺の視線は二人に再び戻った。

二人の穏やかな視線は、
井上に抱かれた小さな犬に注がれていた。


あ…
月ちゃん、子犬を飼うって言っていたっけ…。

俺が『犬嫌い』って知っているから、だから誘わなかったのかな…。


きっと、
単なる『犬の散歩』。

明日の朝、
井上は無邪気に笑って、俺に報告をするんだろうな?

『昨日ね~?』
そんな井上が容易に想像できて、ちょっと悲しい笑い声が漏れた。

だけど…

『ふーん』って普段通りに返せるかな。
俺、笑えるかな…?


笑わなきゃ…。

俺がこんな気持ちでいる事は、誰にも知られちゃいけない。

秘密にしなきゃいけない。


だって。
俺は…

二人の事が、
大好きだから…。


月の下、
俺はそう誓った。


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