月下の君には秘密です。



「…マジで!?あはは!小林くん超ウケる!」

「…だろ?でさぁ~…」


誰もいない教室。

静かなはずのこの部屋は、賑やかなこの二人の話し声ですごく騒がしい。


廊下側の一番後ろの席。
俺の定位置の隣に紗季が座って、椅子だけをこっちに向けて小林が座る。

……ぅるさい…

俺は黙々と弁当を口にほおばりながら、その会話をただ耳に入れていた。


「ねぇ~、ちょっとアッキー聞いてる~?」

紗季がそう言って俺の顔を覗き込んだ。
二人の会話に入らず弁当を食うのに必死な俺が、どうやら気に食わないらしい。


「…飯は静かに食う。これ、俺の基本ッ…」

紗季は俺に『ふぅん』とだけ答えて、俺の弁当箱の蓋に目を向けた。


「…何これ。アッキー!」

「あぁ…。うちの母さんの脅し?」

弁当箱の蓋には、
母さんからの『手紙』が貼り付けられていた。


『大好きなタコさんウィンナー入れといたから』


「…優しいじゃん。どこが脅しなわけ!?うちの親と大違い。」

そう言う紗季の弁当は、コンビニのサンドイッチとペットボトルのお茶。
3日間見てるけど、やっぱり毎日コンビニの買い弁。

親、忙しいのかな?


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