【完結】片想い結婚〜同期からのプロポーズは突然の一夜で〜


「それにしても久しぶりだね、加瀬くん」

 打ち合わせをするため店舗の事務所に連れて来られた俺は、和佳奈の背中を見つめていた。

「はい、どうぞ」

「ああ、ありがとう」

 目の前に置かれたコーヒーカップを見つめながら、俺はビックリしていた。

「まさか今回の打ち合わせの相手が、加瀬くんだったなんて思わなかったよ。ほんとビックリ」

 笑顔でそう話す和佳奈の顔を見ながら、俺は「ほんとそうだな。ビックリしたよ」と話す。

「にしても和佳奈、この店の店長やってたのか?」

「うん、まあ突然の人事異動でここに来たんだけどね。 それまでは私、本社に勤務してたの」

 本社に勤務? なのに突然、店に異動……?

「本社から店の店長って、もしかして……左遷とか?」

「まあ、そんなとこかな。……ちょっと色々厄介なことになって、この店に異動させられたの」

 俺もそこを気にはなったが、深くは聞けなかった。
 その厄介なことに巻き込まれて異動ってことは、何か重大な何か……ってことだろうけど。

「でも業績すごいよな。あっという間に上がったみたいだし」

「そんなことないよ。私も結構、必死なんだから」

 和佳奈の表情が少しだけ変わる。
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