【完結】片想い結婚〜同期からのプロポーズは突然の一夜で〜
千歳は私の頭をポンポンと撫でる。
「うん、飲みすぎないでね」
「分かってる。 じゃあ俺、打ち合わせあるから行くな」
その打ち合わせは多分、真嶋和佳奈だろうな。
「……気を付けてね、千歳」
「ああ、ありがとう」
ただの打ち合わせだと思ってるし、大丈夫だと思うけど、なんだか胸がザワザワした。
やっぱりこれは、千歳の言うように嫉妬だと思う。 本当は千歳が真嶋和佳奈と二人で会うのがイヤなんだ、私は。
あの人は千歳の元カノであって、今は私の夫だ。なんの関係もないと、そう信じたい。
ただの仕事仲間だと……そう信じたいのに。なぜか私の心は、ひどくザワついていた。
「ねぇ、千歳……?」
「ん? どうした?」
私を見つめる千歳のシャツの袖を掴むと、私は千歳に「今日、なるべく早く帰ってきてよ?」と伝えた。
千歳は私の頭を撫でながら「もちろん、なるべく早く帰る」と言葉を返す。
「……うん」
千歳がいないと、実は寂しい。 一人ってこんなに孤独だったんだって、そう思う。
「じゃあ行ってくるな」
「うん、気を付けてね」
「おう」
千歳の背中を見送った私は、再び仕事へと戻った。
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