きっときみに...


 部屋は電気が消えたままだったが、荒い息遣いが聞こえた。


 「柚月?」


 電気をつけてベッドのそばに行くと、眠っている柚月がいたが、額には汗がにじんでうなされていた。



 「ゆずき、ゆず〜。」


 何度か布団をたたくと、柚月は、はっと目を覚ました。



 「郁、にぃ」


 「汗かいてるぞ。嫌な夢だったのか?」


 「 . . . . 」


 柚月は返事をすることなく、布団を頭まで被った。


 「ゆず、苦しいだろ?」


 そう声をかけたが、出てこようとしない。体調が良くないようだし、このままにするわけにもいかない。


 「布団捲るぞ?」


 少し力がかかっていたので、布団を捲れなかったが、無理やり剥がすと、柚月は布団のなかで丸まって震えていた。


 「柚月、どした?」


 「 もういいよ.....私いらないもん...っはぁはぁ...」


 小さく震える声だったが、そうはっきりと聞こえた。次第にまた呼吸が乱れてきていた。


 「柚月、一旦落ち着いてゆっくり息するぞ」



 そう声をかけ背中をさすったが、


 「こんな私なんかっ...はぁはぁ..いないほうがお兄ちゃんたち楽だったよっ....パパもママもっ....はぁはぁはぁ..はぁ.....」



 柚月は興奮して呼吸が荒くなり、過呼吸を起こしていた。両親のことを口にしてきたあたりから、パニックになっている。


 「柚月、大丈夫。落ち着こう。」


 「はぁはぁ...っはぁはぁ.....」



 丸まった姿勢が苦しくなってきたのか、姿勢を崩してなお呼吸が早い。



 「苦しいよな。大丈夫。」




< 28 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop