きっときみに...
部屋は電気が消えたままだったが、荒い息遣いが聞こえた。
「柚月?」
電気をつけてベッドのそばに行くと、眠っている柚月がいたが、額には汗がにじんでうなされていた。
「ゆずき、ゆず〜。」
何度か布団をたたくと、柚月は、はっと目を覚ました。
「郁、にぃ」
「汗かいてるぞ。嫌な夢だったのか?」
「 . . . . 」
柚月は返事をすることなく、布団を頭まで被った。
「ゆず、苦しいだろ?」
そう声をかけたが、出てこようとしない。体調が良くないようだし、このままにするわけにもいかない。
「布団捲るぞ?」
少し力がかかっていたので、布団を捲れなかったが、無理やり剥がすと、柚月は布団のなかで丸まって震えていた。
「柚月、どした?」
「 もういいよ.....私いらないもん...っはぁはぁ...」
小さく震える声だったが、そうはっきりと聞こえた。次第にまた呼吸が乱れてきていた。
「柚月、一旦落ち着いてゆっくり息するぞ」
そう声をかけ背中をさすったが、
「こんな私なんかっ...はぁはぁ..いないほうがお兄ちゃんたち楽だったよっ....パパもママもっ....はぁはぁはぁ..はぁ.....」
柚月は興奮して呼吸が荒くなり、過呼吸を起こしていた。両親のことを口にしてきたあたりから、パニックになっている。
「柚月、大丈夫。落ち着こう。」
「はぁはぁ...っはぁはぁ.....」
丸まった姿勢が苦しくなってきたのか、姿勢を崩してなお呼吸が早い。
「苦しいよな。大丈夫。」