虜にさせてみて?
23時。仕事が終わって少しだけ部屋でのんびりと過ごしてから、響君がまだ仕事をしているバーに向かった。お客様が誰も居なかったので、美奈と美奈の彼氏、私の三人で遠慮なくお邪魔をする。
「客が居ないとはいえ、迷惑な奴らだな」
お客様が誰も居ない場合は社割にて、従業員がカクテルなどを楽しんで良い事になっている。響君はお客が居ない間に本を読んでいたらしく、カウンターの端に伏せた。
「何の本?」
私が伏せてある本に手を伸ばしたら、「何でもいーだろっ!」と言って怒り気味に本を隠した。そんなに怒らなくても良いのに。
「水野君、俺と同い年だよね?ラウンジに何度かケーキを運びに来てるから知ってるとは思うけど俺はパティシエ見習いなんだ」
ニッコリと笑って美奈の彼氏が響君に話をかける。ティータイムのラウンジには朝の内に仕上がったケーキが届けられる。
「湊は私の彼氏。湊と美奈、名前が似てるのが良いでしょ!」
湊君と話をする前に、仲の良さをアピールする美奈に響君は引き気味だ。
「響君に何か作ってもらっおっかなぁ? ジンジャエールが入ってるヤツ、何だっけ? それがいーなぁ」
「じゃあ、俺も同じのお願いします」
響君は呆れた様子で無言で作り始めた。私も何か注文したいけれど、怒られてしまいそうだから二人分を作り終えてからにしよう。
カクテルを作っている響君はバーテンダーの身のこなしが似合っていて、凛としていて普段以上に素敵に見える。
正に天職なのか、スマートにそつなくこなす。
こんな姿を見たら、女の子は直ぐにでも虜になってしまうのだろうな。
東京のバーでは響君目当ての常連客も居そうな気がする。
誘われたら上手く交わすのかな? それとも誘いに乗るの?
私を受け入れてくれたみたいに――
「ひより、ひよりっ! 何でボーッとしてるの? 疲れてる?」
美奈に話をかけられるまで、響君の事を想像してただなんて言えない。
「ううん、大丈夫だよ。何でもないよ。あっ、これは……?」
いつの間にか、目の前に置いてあった淡いブルーの綺麗なカクテル。
「客が居ないとはいえ、迷惑な奴らだな」
お客様が誰も居ない場合は社割にて、従業員がカクテルなどを楽しんで良い事になっている。響君はお客が居ない間に本を読んでいたらしく、カウンターの端に伏せた。
「何の本?」
私が伏せてある本に手を伸ばしたら、「何でもいーだろっ!」と言って怒り気味に本を隠した。そんなに怒らなくても良いのに。
「水野君、俺と同い年だよね?ラウンジに何度かケーキを運びに来てるから知ってるとは思うけど俺はパティシエ見習いなんだ」
ニッコリと笑って美奈の彼氏が響君に話をかける。ティータイムのラウンジには朝の内に仕上がったケーキが届けられる。
「湊は私の彼氏。湊と美奈、名前が似てるのが良いでしょ!」
湊君と話をする前に、仲の良さをアピールする美奈に響君は引き気味だ。
「響君に何か作ってもらっおっかなぁ? ジンジャエールが入ってるヤツ、何だっけ? それがいーなぁ」
「じゃあ、俺も同じのお願いします」
響君は呆れた様子で無言で作り始めた。私も何か注文したいけれど、怒られてしまいそうだから二人分を作り終えてからにしよう。
カクテルを作っている響君はバーテンダーの身のこなしが似合っていて、凛としていて普段以上に素敵に見える。
正に天職なのか、スマートにそつなくこなす。
こんな姿を見たら、女の子は直ぐにでも虜になってしまうのだろうな。
東京のバーでは響君目当ての常連客も居そうな気がする。
誘われたら上手く交わすのかな? それとも誘いに乗るの?
私を受け入れてくれたみたいに――
「ひより、ひよりっ! 何でボーッとしてるの? 疲れてる?」
美奈に話をかけられるまで、響君の事を想像してただなんて言えない。
「ううん、大丈夫だよ。何でもないよ。あっ、これは……?」
いつの間にか、目の前に置いてあった淡いブルーの綺麗なカクテル。