虜にさせてみて?
独占欲
寮に帰った私達は響君の部屋で二次会をする事にした。私を気遣ってか、自分の部屋を貸し出すと提案してくれた響君。何だかんだ言っても優しい。

寮内で二次会をするにしても、響君以外は飲酒をしているので買い出しには行けない。

「売り切れだ! 車を持っている人が全員飲酒してるから、お酒を買いに行けないよね」

寮内には玄関先から男子寮と女子寮に分かれる場所にお酒とジュース類の自動販売機が置いてある。二次会をするにしても、寮内にある自動販売機の酒類は売り切れだった。

お酒は全滅。二次会するにもお酒がなくては、つまらないよね。

「明日にしない?」

私がそう言うと酔っている美奈は反対した。

「ヤダッ! 歩いて買いに行ってでも今日がいいっ!」

コンビニまで歩くのは早歩きをしても30分はかかる。湊君が一生懸命に説得しても『嫌だ!』の一点張り。そんなに意固地になる事なんてないのに、今日に限って美奈はどうしたのだろう?

見兼ねた響君が、「分かった、行こう」と言った。

響君の答えに対して美奈は意気込んで、玄関で靴に履きかえてフラリと外に出てしまう。『俺は着替えてから追いかける』と制服姿の響君は一人で冷静。

酔って、フラついている美奈を私と湊君は急いで追いかける。

美奈は、こんなにお酒弱かっただろうか?

「星が綺麗だね」

美奈に追い付くと私と湊君は腕を掴まれ、空を見上げた。

吸い込まれそうな程の満点の星空。昨日の夜も響君と見た。

この場所から車で一時間半の私の実家では、こんな綺麗な星空は見れない。

電灯の灯りしかなくて、暗くて不気味な夜道。だからこそ、輝く星達を見れる。

都会育ちの響君もいつか、この場所を気に入る日がくるだろうか?

「流れ星落ちないかなぁ。願い事はたった1つなんだけどなぁ……」

美奈がそう口にして、両腕を私達に絡めたまま再び歩きだす。

美奈の願い事とは湊君関係かな? 私の願い事は何だろう――
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