虜にさせてみて?
瞬に対しての苛立ち、心の奥底では切なく思っている自分。

消化出来ない思いは、この先どうなってしまうのか?

瞬と別れた後のアタシはどうなってしまうの?

泣かないように気持ちが落ち着くように、目を閉じて唇をキュッと噛み締めてから、皆の所へ戻った。

皆とお酒を飲み、普段話せないような話をしたり、楽しい時間を過ごした。

響君は質問責めで早く帰りたそうだったけど、帰らせてあげなかった。

早く馴染んでほしいし、それに……。

時間が立つにつれて、何人かは帰った。残っている人達は、ほとんど泥酔。

明日も仕事だけれど寮まで歩いて帰れるから、その点は心配しなくて良い。

響君は周りを見渡して、呆気にとられていた。

「帰ろう? 水野響さん?」

そろそろ解放してあげたい。響君の腕を引っ張って外へ出た。

急ぎ足で、裏口から外へ出て、そして酔っている勢いで「キスくらいさせて?」と響君が答える間もなく、唇を重ねた。

酔いに任せて、”瞬”を忘れさせて欲しくて。

忘れさせてくれないかな?

心も、体も、傷ついたって構わない。

”瞬”の事が頭から離れてくれれば、構わない。

もういらない。

瞬への気持ちも温もりもいらない。

酔いに任せて、身を任せてもいいかな?
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