虜にさせてみて?
――過去を話した美奈は驚いている。今まで話さずに隠していたので、当然と言えば当然か。

「はぁ? 駿って、あそこのバーのイケメン?」

「そうだよ、黙っててごめんね。あはは、やっと話せて嬉しい」

美奈に全てを話す事が出来た。

思ったより、冷静に話せた事が自分でも意外だと思った。

「えと、じゃあ、響君とは偽りの彼カノだった訳?」

「そうだね、そういう事になるね」

美奈は何て思うのだろう。

私は滑稽だと思う?

「正直、ひよりってさ」

「うん」

「真面目な良い子ちゃんを演じてんのかなって思ってたの。彼氏も作らないし、誰にでも優しいし、仕事熱心だし。でも違ったんだね? ひよりは一人で苦しんでいたんだよね?」

「美奈……」

美奈に全てをに話せた事で安心してか、我慢していた涙が溢れ出す。

自分を忘れて激しく泣きじゃくる私の姿を見て、美奈は優しく背中をさすってくれた。

「今日はいっぱい泣いていいよ?湊にも響君にも内緒にしとくから。でも、これだけ泣いたら目が腫れちゃってバレちゃうかも?」

「……うっ、美奈の意地悪」

「あははっ!ねぇ、ひより、響君に”恋”出来るといいね」

「ん?」

微かに聞こえた美奈の言葉が泣くのを止めた。

「響君を連れて歩けたら、自慢出来るじゃない? 駿よりカッコイイし。それに誰よりも、ひよりを大事にしてくれると思うよ?」

前者は冗談として、後者は美奈の本音だね。私もそう思うよ。

響君は不器用なだけで、本当はとても優しい事。

垣間見える優しさが私の心に入り込んでくる。

「今日はお泊りしてね。よし、ひよりの本音をもっと聞こうっと」

「もう何もない、けど?」

「あるじゃん! 駿との事とか、駿とか……」

「うぅ、やっぱり美奈は意地悪だ!」

「親友として聞くのは当然!」

「はぁ……」

私は泣き腫らした顔で美奈に馴れ初めとかを話し出した。

全てを話したら、心のモヤモヤも薄れた。

美奈に相談して良かったと心から思える。

これからも、ずっとずっと、大好きな親友。
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