虜にさせてみて?
本音と夢の中
時計は夜中の2時を過ぎていた。

長い時間話し込んで、それでもまだ話は止まらずにいたけれど、明日も仕事だから寝る事にした。

「おやすみ、美奈」

美奈のベッドに一緒に潜り込み、眠りについた。シングルベッドなので多少は窮屈だが、久しぶりのお泊まり会に心が踊る。

美奈と湊君が付き合う前は、さっちゃんと三人でフローリングの床でゴロ寝してたよね。

美奈の寝息が聞こえる。

眠いのを我慢していたのか、直ぐに眠りについたみたいだった。

私もウトウトとしてきた時、スマホが鳴った。

「はい?」

湊君だった。

美奈ではなく、何で私に?

理由は直ぐに分かった。

響君と湊君が二人で歩いて駿のバーに行き、響君が倒れそうになる程に強いお酒を飲んだらしく、
迎えに来て欲しいとの連絡だった。

私は飛び起きて、美奈が起きないようにそっと部屋を出て車を走らせた――

響君を介抱している湊君を発見し車に乗せる。響君は車に乗った直後に眠ってしまった為、寮に着いてからも様子を見ていた私。

湊君は出勤が私よりも早いので先に帰って貰うことにした。

「あ、起きた!!」

深い眠りについていたのか、何度読んでも起きなかった響君が目を開けた。

薄明かりの街灯が、うっすらと車の中を照らす。

「響君、大丈夫? お水飲む?」

寝ぼけ顔の響君にペットボトルの水を差し出しす。

「ひよ、り?」

「ん?」

「……ひより?」

「何?」

響君が何度も私を呼ぶ。

ペットボトルを差し出した手をすり抜けて、頬に響君の手のひらが触れる。

仕事中は無視されてたから、正直、ビックリしたけれど、触れられた手のひらは嫌じゃなかった。

「ごめん、無視する……つもりじゃなかった」

手のひらは更に手を伸ばし、私は響君の腕の中に納まった。

痛い位に強く、強く、逃げ出せない位に抱きしめられた。
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