虜にさせてみて?
河岸に降りる階段の前で、私はバケツを持って立ち尽くして居た。
「っはぁ、何で走って行くんだよっ。馬鹿っ!」
追い付いたらしく、息が上がっている響が後ろから話しかけて来た。
「アレ? あの子は?」
「美奈ちゃんと湊のとこに置いて来た。走って来てやったんだ、有難く思え」
「うん。ねぇ、響、水はこの先で汲もう。早く行こう」
先に進もうとした響が私の姿に驚く。
「本当に馬鹿だな、お前。走るから転ぶんだ」
「だって……」
理由を言う前に歩き出そうとしたら、河岸からはバシャバシャと水が弾く音が聞こえた。
慌てて下を見てみると、河に入って行こうとする女の子を駿が抱き上げて、河岸まで戻ろうとしていた。
バタバタと足を動かして抵抗する女の子。
「アイツ……」
響が駿に気付いたようだった。
女の子を抱き上げて、階段を登ってくる駿も私達に気付いた。
駿は一瞬、目を反らしたが近寄って来る。
何を言うかと思ったら、響にこう言った。
「悪い、ちょっと預かってて、車回してくるから。千夏、ここに居な」
ずぶ濡れの女の子は、響の前に降ろされた。
「貴方がひよりさん? さっき、駿ちゃんが小声で呼んでたから」
「はい、そうですけど」
聞きたい事は沢山あるが、緊急事態らしいので何も聞けずに無言で駿を待つ。
河岸横の土まじりの芝生から、アスファルトの道路まで出た。
少し立ってから車が来て、駿が車から降りて来る。
「ごめん、有難う。ねぇ、響君、今日だけトレードしてっ」
女の子にひざ掛けを渡すと響に突き飛ばし、何故か私を持ち上げて車に乗せた。
「えっ? 降ろし、てよっ」
「ちょっと、待てって」
突然の出来事に私も響も女の子も戸惑う。
駿は一体、何がしたいのだろうか?
「っはぁ、何で走って行くんだよっ。馬鹿っ!」
追い付いたらしく、息が上がっている響が後ろから話しかけて来た。
「アレ? あの子は?」
「美奈ちゃんと湊のとこに置いて来た。走って来てやったんだ、有難く思え」
「うん。ねぇ、響、水はこの先で汲もう。早く行こう」
先に進もうとした響が私の姿に驚く。
「本当に馬鹿だな、お前。走るから転ぶんだ」
「だって……」
理由を言う前に歩き出そうとしたら、河岸からはバシャバシャと水が弾く音が聞こえた。
慌てて下を見てみると、河に入って行こうとする女の子を駿が抱き上げて、河岸まで戻ろうとしていた。
バタバタと足を動かして抵抗する女の子。
「アイツ……」
響が駿に気付いたようだった。
女の子を抱き上げて、階段を登ってくる駿も私達に気付いた。
駿は一瞬、目を反らしたが近寄って来る。
何を言うかと思ったら、響にこう言った。
「悪い、ちょっと預かってて、車回してくるから。千夏、ここに居な」
ずぶ濡れの女の子は、響の前に降ろされた。
「貴方がひよりさん? さっき、駿ちゃんが小声で呼んでたから」
「はい、そうですけど」
聞きたい事は沢山あるが、緊急事態らしいので何も聞けずに無言で駿を待つ。
河岸横の土まじりの芝生から、アスファルトの道路まで出た。
少し立ってから車が来て、駿が車から降りて来る。
「ごめん、有難う。ねぇ、響君、今日だけトレードしてっ」
女の子にひざ掛けを渡すと響に突き飛ばし、何故か私を持ち上げて車に乗せた。
「えっ? 降ろし、てよっ」
「ちょっと、待てって」
突然の出来事に私も響も女の子も戸惑う。
駿は一体、何がしたいのだろうか?