虜にさせてみて?
無表情で淡々と答えた駿に苛立ちを感じた。

駿って、こんなに冷たかったんだ。

あぁ、100年?、1000年? の恋が覚める瞬間が分かった気がする。

響は一見、冷たそうに見えるけれど本当は凄く優しいよ。

駿なんて、自分の都合ばっかりじゃないっ!

「駿って冷たいよね。自分が良ければいいの?今まで黙ってたけど、駿にいっぱい傷つけられたよ。いつも、いつも私ばっかり好きで苦しかった」

駿にやっと言いたい事を言えた。

今までは捨てられたくなくて我慢していたから。

駿の本性が見えた気がしている。恋する熱が冷めてきたからか、一気に吹っ切れた気がした。

一度吹っ切れたら、私だって本心を言える。

「駿も、いっぱい傷つけられればいいよ。そしたら私の気持ちも他の女の子の気持ちも分かると思うから」

「……他の女の子?」

「そうだよ、今まで駿が遊びで付き合ってた子とか。私は知ってるんだから! すれ違い様に助手席に違う女の子が乗ってた事」

駿は何も言わないまま、夜道に車を止めた。

「私は謝らないからねっ!駿の本心が分かって、一気に嫌いになれて良かった!」

強がりじゃない。

これが今の本音。

さっきまでのドキドキなんて消えた。

今はただ、響に会いたい。

勝手だけれど、響の方が好き。大好き。

帰ったら抱きしめて貰おう。

「フッ、最初から本心で話してくれれば良かったのに。とんだ誤算だね」

駿が言った意味がよく分からない。

きょとんとしている私の肩を抱き、顔を近付ける。

抵抗しようとしても、跳ね返せない。

「んっ、」

駿が私の唇を塞ぐ。

ハザードランプが点灯する中、私は駿から逃げられなかった。

嫌いになれたハズなのに、頭の中で蘇る思い出。

何故なの?

――ねぇ、響。迎えに来てよ。
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