君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
真紘に噛みつかれた父は眉根を寄せる。
「なんの話だ」
「史乃さんから聞いた。父さん、母さんが亡くなったあと、みちるちゃんのお母さんと付き合ってたんだってね。妻の親友に手を出すとか最低。母さんが天国で悲しむってわからなかったのかよ?」
頭ごなしに真紘に責められ、父は驚愕の表情になる。
「なぜそれを……」
「俺は二十年も前に、母さんから父さんにはほかに好きな女性がいると聞かされました。それがみちるの母だったんでしょう」
俺が追撃すると、父は目を伏せた。
俺と真紘は無言で父の言葉を待つ。
「……なるほど。絢子は郁人に話していたんだな」
「はい。母さんが生きていた頃は、父さんは心の浮気をしていると」
「心の浮気? なにそれ?」
真紘は俺と父を交互に見た。
「真実を話そう」
父はソファに腰を下ろした。向かい側に俺と真紘が座ると、ゆっくりと口を開く。
「最初にこれだけは否定させてほしい。私とみちるちゃんのお母さま――泰世さんはなんの関係もない。そもそも私に絢子以外に好きな女性がいるという話自体が誤りだ」
「なんの話だ」
「史乃さんから聞いた。父さん、母さんが亡くなったあと、みちるちゃんのお母さんと付き合ってたんだってね。妻の親友に手を出すとか最低。母さんが天国で悲しむってわからなかったのかよ?」
頭ごなしに真紘に責められ、父は驚愕の表情になる。
「なぜそれを……」
「俺は二十年も前に、母さんから父さんにはほかに好きな女性がいると聞かされました。それがみちるの母だったんでしょう」
俺が追撃すると、父は目を伏せた。
俺と真紘は無言で父の言葉を待つ。
「……なるほど。絢子は郁人に話していたんだな」
「はい。母さんが生きていた頃は、父さんは心の浮気をしていると」
「心の浮気? なにそれ?」
真紘は俺と父を交互に見た。
「真実を話そう」
父はソファに腰を下ろした。向かい側に俺と真紘が座ると、ゆっくりと口を開く。
「最初にこれだけは否定させてほしい。私とみちるちゃんのお母さま――泰世さんはなんの関係もない。そもそも私に絢子以外に好きな女性がいるという話自体が誤りだ」