君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
郁人さんは関与していなかったと知り、私は目を丸くする。

たしかに違和感はあった。

史乃さんは郁人さんからなにもかも聞いたというような話しぶりだったのに、私に身を引けと言ったから。

私と郁人さんの結婚が半年間の偽装だと知っていれば、わざわざそんなふうに迫らなくてもいいはずだ。放っておいても近いうちに離婚する。

きっと史乃さんは私たちに一刻も早く別れてほしいと思っているのだと、あの場の私は自分をそう納得させていた。

「言っただろ、君を信じると。俺はあのとき、君への想いを貫くと決めた」

「私への想いって……」

「君を愛してる」

私は彼の腕の中で固まった。

「芯が強くて明るいオーラを持っている君が、最初から好きだった。こんなに誰かに心を惹かれたのは君が初めてなんだ」

熱い告白をする彼は止まらない。

「離婚を撤回してほしい。今までの行いを一生かけて償う。この先もずっと俺のそばにいてくれないか」

両手で頬を包まれ、まっすぐに見つめられた。

彼の真摯な愛情が溢れるくらい伝わってくる。

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