君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「償いなんていりません。私のほうこそ郁人さんに謝らなきゃいけません。郁人さんは私を信じると言ってくれたのに、私は郁人さんを信じられなかった。ごめんなさい」

海で心を通わせ合ったのに、史乃さんの言葉にいとも簡単に揺らぎ、一方的に離婚届を突きつけた。

彼はどんな気持ちでそれを真紘さんから受け取ったのだろう。

想像するだけで胸が張り裂けそうになる。

今なら少しだけ絢子さんの気持ちがわかる気がした。

誰かを深く愛せば愛すほど、不安になってしまうのだ。

でも、私たちはやり直せる。

「みちる……」

「私も最初から郁人さんが好きでした。どうかこれからもあなたの妻でいさせてください」

郁人さんと生きていきたい。

「ありがとう、みちる。大切にするから」

再び抱き締められてささやかれた。

胸がいっぱいになっていると、ふたりの間で着信音が鳴り響く。

郁人さんはスーツの内ポケットからスマートフォンを取り出した。

「真紘か。ああ、みちるが見つかった」

どうやら電話は真紘さんからのようだ。

私も自分のスマートフォンを見ると、郁人さんと真紘さんからの着信で埋まっていて驚いた。ファストフード店を出たあたりから一度も確認していなかったのだ。

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