君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「なにも知らないのにはねつけるのはよくないです」

少し強引だけれど、少しでも彼に負の感情を払拭してほしくて言い切った。

好きでもないのは問題ないのなら、その娘さんとうまくいく可能性はゼロじゃない。会ってみたらどうなるかわからないのだ。

彼は返答に窮している。

即座に否定しないことに、少しは前向きに考えているのかもしれないと期待が持てた。

「もしかしたら、すごく素敵な女性かもしれませんよ」

「そうだろうか」

「はい。きっとこれはご縁だから、あなたはその娘さんと幸せな結婚ができると思います」

にっこり微笑むと、彼は唖然とする。

「君は本当に変わった女性だな。プラス思考というか、楽観的というか」

「できるだけなんでもいい方向に考えるようにしているんです。毎日を楽しく過ごしたいから」

「いいね、すごく」

彼は柔らかい笑みを浮かべた。

よかった! 私の心得が届いたようだ。

「はい。この世は一秒先の未来すら予測できないですから」

どれだけ思い悩んでも、なにが起こるかなんて誰にもわからないのだ。

「ああ、たしかにいきなり羽交い締めにされる未来は予測できなかった」

「わぁっ、それはもう忘れてください!」

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