君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「緊張して挙動不審になっている君がかわいい」

「なっ……」

郁人さんはこの状況を楽しんでいるようだった。

私をシーツの上にコロンと倒し、優しく髪を撫でてくる。

「君の一挙一動をずっと見ていたいが、もう限界だ」

端整な顔が近づいてきて、反射的に目を閉じると唇が重なった。

「ん……っ」

強張る体をほぐすように、優しいキスが何度も降ってくる。

「……私、初めてで……」

わざわざ口にしなくても気づかれているだろうけれど、言わずにはいられなかった。

「ああ。優しくするよ」

慈しむように髪を撫でられる。

「……はい。あの……」

「ん?」

「名前を呼んでほしいです。いつも『君』って呼ばれるのが寂しかったから」

「ああ……すまない。みちる」

私のお願いに応えるように、郁人さんが耳もとでささやいた。

「はい……」

「愛してるよ、みちる」

額をくっつけるようにして、瞳に覗き込まれた。

口づけが深くなり、舌を差し込まれて甘く吸われる。

「あっ……」

「みちる、かわいい」

「恥ずかしい……」

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