君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
攻撃的で、憎々しさを隠そうともしない郁人さんは、私を睨みつけている。

あの日とはまるで別人のようだった。

でも私は本当に彼の正体を知らなかったし、紛れもなくあの出会いは偶然だったのだ。

彼にかけた言葉も、物事をいい方向に考え、前向きになってほしかったからだった。

「みちるちゃん、待たせてすまないね」

そこへ、桐嶋のおじさまがやって来た。

「この子がみちるちゃん? めっちゃかわいい」

すぐ後ろにいたもうひとり男性が、私に好奇の目を向けながら声を弾ませた。

年齢は私と同じくらいだろうか。ニュアンスパーマがかかったマッシュヘアで、整ったさわやかな顔立ちをしている。とてもおしゃれな雰囲気だ。

「郁人と挨拶は済んだかね? こちらは次男の真紘だ」

「よろしくね、みちるちゃん。一、二歳の頃、何度か会ったことがあるみたいだけど、ほとんどはじめましてだね」

「はい、よろしくお願いします……。あの、桐嶋のおじさま、私はここで住み込みのお手伝いさんとして雇ってもらえるんですよね? なにか食い違いがあるようなのですが……」

私はすぐさま桐嶋のおじさまを問い質した。

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