君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
そして昨日、母の四十九日が過ぎ、寺院に納骨を済ませた私は、一週間後に彼の屋敷に行く予定になっている。
「ん?」
緩く曲がった川の近くまで来ると、橋の上にひとりの人影があった。
全長二十メートルほどの橋にはランタン型の小さな橋灯しか点いておらず、年齢や性別は窺い知れない。静かに佇む姿に目を奪われる。
めちゃくちゃ寒いのに、なにしてるんだろ?
自分だってこの寒気のなか家を出てきたのに、そんなことを思った。
まるで置き物みたいに微動だにしないのが心に引っかかる。
都内の中心地から離れたこの場所は、車の通りもなく、夜のしじまに包まれている。日中は川沿いを散歩している人もいるけれど、見渡す限りほかの人の姿は見当たらなかった。
人影に近づいたら、ロングコート姿の男性だとわかった。
三十歳前後くらいだろうか。すらっと背が高く、とても風格がある。その横顔は高潔で美しく、どこか浮世離れした雰囲気だ。
私の周りにはいない上流階級のオーラについ目が離せずにいると、男性がいきなり欄干から身を乗り出した。
「えっ、危ない!」
考えるより先に体が動いていた。
「ん?」
緩く曲がった川の近くまで来ると、橋の上にひとりの人影があった。
全長二十メートルほどの橋にはランタン型の小さな橋灯しか点いておらず、年齢や性別は窺い知れない。静かに佇む姿に目を奪われる。
めちゃくちゃ寒いのに、なにしてるんだろ?
自分だってこの寒気のなか家を出てきたのに、そんなことを思った。
まるで置き物みたいに微動だにしないのが心に引っかかる。
都内の中心地から離れたこの場所は、車の通りもなく、夜のしじまに包まれている。日中は川沿いを散歩している人もいるけれど、見渡す限りほかの人の姿は見当たらなかった。
人影に近づいたら、ロングコート姿の男性だとわかった。
三十歳前後くらいだろうか。すらっと背が高く、とても風格がある。その横顔は高潔で美しく、どこか浮世離れした雰囲気だ。
私の周りにはいない上流階級のオーラについ目が離せずにいると、男性がいきなり欄干から身を乗り出した。
「えっ、危ない!」
考えるより先に体が動いていた。