君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「そういうわけでもうしばらくはあまり家にいなくても大目に見てやってほしい」

「毎日帰って来てくれるだけで十分です」

避けられているわけではなかったのだ。

仕事が忙しいのなら喜ばしいことだった。

「かわいらしいことを言ってくれる」

お義父さまは顔をほころばせた。

郁人さんが私に無関心でも、私はそうじゃない。彼との結婚生活で、切なさとは相反する感情がないわけではなかった。

誤解され、弁明さえさせてもらえなくても、やっぱり彼が好きなのだ。

「そうだ。みちるちゃんも真紘と同じ大学に通ってもいいんだよ」

不意に投げかけられ、目をぱちくりさせる。

「大学ですか?」

「ああ。大学でなくとも、なにか習い事を始めるのもいい」

習い事ならしてみたい。でもお金がかかることだし、すぐには決められなかった。

お義父さまは私の胸の内を読み取ったのか、にっこりと笑みを浮かべる。

「費用の心配はしなくていい。君と郁人が破談になっていても、私は君に仕送りをするつもりだったからね」

お義父さまがそんなことを考えていたなんて知らなかった。

「ありがとうございます……。どうするか、郁人さんに相談してみます」

素直にお礼を言った。

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