君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「ローストビーフだ。いただきまーす」

お肉を口に運んだ途端、真紘さんは笑みを浮かべる。

「めちゃくちゃおいしいよ。みちるちゃん、お料理上手なんだね」

「ありがとうございます。そう言ってもらえると、ちょっと自信がつきます」

照れながらも、真紘さんから目が離せなくなった。

笑顔が郁人さんとよく似ている。

タイプが違うと思っていたのに、やっぱり兄弟だ。

つい郁人さんと重ねてしまい、胸がキュッと締めつけられた。

私の願いは、郁人さんの笑顔が見たい。

ただそれだけなのに……。

「なにをそんなに真紘に見惚れているんだ」

低い声にはっとすると、郁人さんが険しい表情で私を見据えていた。

「見惚れていたわけじゃ……」

「なーに兄さん、ヤキモチ?」

にやにやする真紘さんを、郁人さんは睨みつける。

「わあ怖い。兄さん、もう相当みちるちゃんに入れ込んじゃってるんだな。みちるちゃんはどうなの? 兄さんとの生活に慣れた?」

真紘さんは郁人さんの形相にお構いなく、料理を平らげながら訊いてきた。

「はい、少しずつは……。あ、そういえば、昨日お義父さまがなにか習い事を始めるのもいいって言ってくださったんです」

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